いけばなと呼吸の関係

いけばなは、室町時代に生まれ、何百年に渡って、日本人の美意識や精神性と深く関わってきました。現代においては床の間から飛び出し、アートの分野での表現活動を広げ、芸術性の高い評価も受けるようになりました。その特徴として、いけばなのもつ美しさには、“呼吸感”があることが、他のアートとは、決定的に違う点だと思っています。その“呼吸感”は、消えゆく、うつろいゆく日本人の「無常観」をあらわし、私達の心に静かによりそうように響いてくるもので、美しさを内側に秘めているものかもしれません。
又、植物の呼吸のリズムがひとの呼吸のリズムに共振するかどうかは、科学では立証することが難しいですが、植物と向き合ういけばなによって、呼吸を整えていることがわかったら、とても嬉しい発見となると独自の仮説を検証してみたいという思いがありました。

いけばなは,我々に何をもたらすか

そんな折、「情動を作る脳のセンサーが呼吸である」という話しを呼吸生理学者の本間生夫先生から伺い、美しいと感じる瞬間も、呼吸のリズムが作りだしているということに衝撃を受けました。興味深いこの事実より、「How‘Ikebana’ affects our mind and respiration」―いけばなは、我々に何をもたらすか―をテーマにいくつかの実験を行いました。

本間先生の研究では、被験者の心理的状態、特性不安と状態不安をSTAI(state trait anxiety inventory)という世界的にもポピュラーな測定を質問紙しています。一分間の呼吸数(respiration)をいけばなを行う前といけばなを行った後に測定をしています。 この実験により特性不安の高い人がいけばなを行い、その後の呼吸数を測定すると明らかに減っていることがわかりました。

本間先生は、喜怒哀楽の情動は、脳の最も深いところにある大脳辺縁系の扁桃体が中心となっていて、扁桃体による情動活動は、呼吸によって支えられているという研究をされています。よって不安を感じているときに呼吸数を減らすような体操をおこなうことや、植物に触れて美しいと感じることでもこの不安感を和らげる効果が高いと考えています。 また、呼吸の研究を進める中で日本の伝統芸能である能に出会い、能は呼吸を介して、心の変化を観客に伝える芸能だということに気づいたそうです。日本文化は、古来より呼吸と心を結びつけて表現されるものが基本となっているのかもしれません。

我々の呼吸と共鳴したときの美しさ

緑豊かな風にそよぐ木々の中に身をおくと、自分の呼吸がゆっくりと深くなっていくのがわかります。いけばなは植物と向き合う時間、手をかける時間は、呼吸のリズムを変化がしてるのではないかと思います。そして植物と積極的にかかわるからこそ、感じる美しさがあります。いけばなの独自な空間性、間、生命感、呼吸感が人間の呼吸と共鳴しているのではないでしょうか。

いけばなと呼吸というテーマでの私の興味はつきませんが、
いけばなを楽しむと呼吸が美しくなることは、お伝えしていきたいと思います。

そして、未来を創る子供たちに豊かな心を育んでほしいとの想いから、
いけばなワークショップの活動にも取り組んでいます。
ワークショップでの活動 ─ 大泉麗仁

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